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2023.07.31

持続可能性を実現するために、水素エンジンができること

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環境保護のために求められる水素エンジン

米国では、中型車や大型車を中心とする商業輸送部門からの排出ガスが問題となっています。2020年には輸送部門における温室効果ガスの約4分の1を、中型車と大型車が占めていました。さらに、排出される窒素酸化物(NOx)の約3分の1は、中型車と大型車が原因だと言われています。そのため商業輸送部門は、排出ガスの削減を求められているのです。

排出ガス量の削減にあたっては、「温室効果ガス」と「NOxをはじめとする他の汚染物質」の両方を考慮する必要があります。これらの削減が求められる理由は、政府による規制だけではありません。より環境に配慮したサービスプロバイダーとのビジネスを望むお客さまが増えていることも、理由のひとつです。またビジネスの長期的な持続可能性を確保するためには、排出ガス量の削減が必須だと考える企業もあります。

そこで注目が集まっているのが、水素エンジンです。車両の動力を水素エンジンに切り替えることで、多くの用途でさまざまなメリットが得られます。この記事では、持続可能性を実現するうえで水素エンジンが役立つ点について、3つに分けてご紹介します。

1. 温室効果ガスの排出量を削減できる

水素はカーボンフリーの燃料です。水素エンジンを搭載した商用車や装置は、二酸化炭素の排出量を99%以上削減して、脱炭素化を加速させることができます。

さらに、グリーン水素を使えばWell-to-Pumpにおける温室効果ガスの排出量を少量に抑えることも可能です。Well-to-Pumpは、燃料の製造、輸送から供給設備への格納までの間に発生する温室効果ガスの排出量を示す指標です。グリーン水素は温室効果ガスを全く発生しないプロセスで製造されるため、Well-to-Pumpの排出量削減に大きく貢献できるのです。

Well-to-Pumpにおける温室効果ガスの排出量を、完全にゼロにできる燃料はありません。燃料の供給に関わるあらゆる活動を、完全に脱炭素化することは不可能です。しかしグリーン水素は、あらゆる燃料の中で最もゼロ・カーボンに近い燃料だと言えるでしょう。

2. NOxなどの大気汚染物質への対応が必要

水素燃料には、炭素や硫黄といった他の元素が含まれていません。そのため燃焼後は主に水蒸気のみが発生し、燃料自体からは温室効果ガスも発生しません。グリーン水素を使用すれば、燃料の生成に伴う温室効果ガスの排出量もゼロにできます。

しかし、水素エンジンからは少量のNOxが発生する場合があります。NOxは、空気中の窒素と酸素が反応した際に生成する物質です。過剰なNOxを排出しないよう、水素エンジン車には排出ガスからNOxを除去する後処理システムが必要なのです。

3. 既存のリソースを使って製造・運用できる

水素エンジンの構造は、従来の内燃機関と似ています。そのため、運送業者やドライバーにとって使い慣れた技術であり、運行や整備がしやすい点は大きなメリットです。さらに、既存のエンジン工場の設備を活用して、低コストかつ大規模に製造できる点にも注目されています。

また、水素エンジンを特定の商業用途で使用する場合、高密度の水素補給インフラを構築する必要はありません。例えば水素バスは、主要なバスターミナルに設置された水素ステーションで毎晩燃料を補給すれば運行し続けることができます。

以上の理由から、水素エンジンは、多くの用途において水素燃料電池よりも採用されやすいのです。

多くの中型車や大型車が水素エンジンを搭載するようになれば、グリーン水素がより利用しやすくなり、他の水素技術で使用される水素貯蔵設備の製造規模も拡大するでしょう。水素エンジンは水素経済を活性化し、脱炭素化のペースを間接的に加速させるためのカギなのです。

水素エンジンについてさらに詳しく知りたい方は、よくある質問とその回答をご確認ください。

※この記事は、2022年9月13日に英語版で公開された記事を抄訳、加筆したものです。

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