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2023.08.21

LFP電池について知っておきたい5つのポイント

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電気自動車の主流電池となり得る、LFP電池

あなたは、「LFP」という用語を聞いたことがありますか?

LFPとは「リン酸鉄リチウム(lithium iron phosphate)」と呼ばれる化合物を使ったバッテリーのことで、パワフルで軽量、かつ急速充電が可能という優れた特長を持っています。このLFPが現在、北米と欧州のバッテリー製造および電気自動車(EV)販売市場で見直され、採用が急速に進んでいるのです。

LFP電池の勢いは、日本でも確実に広がっています。大規模なLFP生産工場の建設計画が持ち上がるなど、多くの日本企業がLFP製造とEVへの活用に力を入れはじめているのです。

このように順調な広がりを見せるLFP電池ですが、実は新しい技術ではありません。LFPが最初に世に出たのは1996年。当初は信頼性の高いバッテリーとして注目を集めましたが、他のバッテリーに主役の座を取られ、表に出ることは少なくなっていました。それが最近、また注目を集めているのです。

LFP電池について知っておきたい5つのポイント

LFP電池がEV用電池として再注目され始めたのには、どのような理由があるのでしょうか。ここからは、LFPに関するファクトをご紹介しつつその理由に迫っていきます。

①LFPはリチウムイオン電池の一種

EV向けのバッテリーとしてよく知られているのは、リチウムイオン電池でしょう。リチウムイオン電池は、携帯電話やノートパソコンなど身近な製品にも使用されており、実物を見たことがある人も多いはずです。実はLFP電池は、このリチウムイオン電池の一種なのです。

リチウムイオン電池にはこのほかに、ニッケル、マンガン、コバルトが主成分のNMCバッテリーや、ニッケル、コバルト、アルミニウムが主成分のNCAバッテリーなどがあり、EV向けとして使われています。

②LFPの「F」は「鉄」

バッテリーは通常、正極に使用される化学物質の名前にちなんで命名されます。

LFP電池は、LiFePO4という化学式で表される無機化合物「リン酸鉄リチウム(lithium iron phosphate)」を正極材に使用しています。そのため、LiFePO4を構成する3つの元素「Li(リチウム)」、「Fe(鉄)」、「P(リン)」の記号を組み合わせて「LFP」と呼ばれているのです。

③LFPは100%まで充電可能

EVを長持ちさせるには、バッテリーを健全な状態に保つことが重要です。

リチウムイオン電池の一種であるNMCバッテリーやNCAバッテリーなどは、満充電状態が続くと劣化しやすくなります。逆に連日の満充電を避ければ、使用していなくても起こるバッテリーの自然劣化や過充電による熱暴走などを抑えることが可能です。バッテリー寿命を延ばすための最適なバッテリー容量は、80%程度だと言われています。

一方のLFP電池は、この充電規格には当てはまりません。これは、正極材であるLiFePO4のおかげです。LiFePO4内部のリン原子(P)と酸素原子(O)は非常に強く結びついているため、他のバッテリーよりも酸素原子が放出されにくく、熱暴走が起こりにくいのです。

④LFPは他のリチウムイオン電池よりも低コスト

EVの製造で問題となるのが、バッテリー製造にかかるコストです。例えば、NMCバッテリーやNCAバッテリーを製造するにはニッケルとコバルトが必要ですが、これらは非常に高価なレアメタルです。ニッケル不足は進んでおり、コバルトの生産も限界に達しています。そのため、NMCバッテリーやNCAバッテリーを製造し、手頃な価格でEVに搭載するのは難しいのが現状です。

一方、LFP電池は正極にニッケルやコバルトを使用せず、代わりに安価で入手しやすい鉄を使用しているため、サプライチェーンや価格の問題を回避できます。

⑤EVでの世界シェアは17%

LFP電池を最初に発見したのは、テキサス大学のJohn Bannister Goodenough氏の研究グループです。LFPバッテリーの有利な特性は当時高く評価されましたが、LFPはその後10年間、大規模に採用されることはありませんでした。

その後、LFPの技術は年々向上。現在ではオートバイや太陽光発電装置、電気自動車に至るまで、幅広く使用されています。今や、全世界で販売されるEVの17%にLFPが使用されています。今後は、電気バスや電気トラックといったオンハイウェイ車両でも広く採用されていくことが期待されています。

リチウムの供給不足が警告され、2030年には世界的なEV販売台数が低下するとされる中でも、LFPをEVに採用する勢いは衰えていません。LFP電池は今後も、低コストで、効率的に充電でき、耐用年数も長いバッテリーとして、多くの人々に愛されることでしょう。

LFP電池は電動化の未来を支える優れたソリューション

カミンズは、2022年にLFP電池の製造を開始しました。カミンズのLFP電池は、高速充電できる上に高出力で、長寿命化も実現しています。連続運転における要求を満たした上で総所有コストも抑えられる、優れたソリューションなのです。

カミンズのLFPソリューションは、今後も世界各地で活躍する予定です。電動化の未来をつくるため、カミンズは今後も技術開発を精力的に進めていきます。

※この記事は、2022年9月22日に英語版で公開された記事を抄訳、加筆したものです。

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