「水素エンジン」が運輸・物流業界に魅力的な理由

水素エンジンのメリットとカミンズの取り組み

水素は、化石燃料の代替として注目を集める次世代のエネルギーです。これまで輸送分野では、水素を使用した燃料電池電気自動車（FCEV）が脚光を浴びていました。しかし最近、中型および大型トラックを中心に、「水素エンジン」を搭載した水素自動車への関心が高まっています。

水素を燃料とする内燃機関である水素エンジンのメリットは、FCEV と同じくカーボンフリーの水素燃料を使用しながらも、自動車メーカーや運送会社、ドライバーにとって使い慣れた技術であることです。

また水素エンジン技術は、以下のような理由から「電動化しにくい」アプリケーションに効果的です。

• デューティ比に関する厳しい要求がある
• 運転日数や走行距離などを最大化する必要がある
• さまざまなルートを走行する
• 過酷な環境条件にさらされる

エンジンをベースとするパワートレインは、このような極端で多様な条件下でも安定して動作することが証明されています。

カミンズは、二酸化炭素の排出削減に向けたデスティネーションゼロ戦略を達成する上で、水素エンジンが大きな役割を果たすと考えています。当社は、商用車および車両設備の市場に向けて、6.7Lおよび15Lの水素燃料エンジン開発を計画しています。また、2022年5月に開催されたACT Expoでは、15Lの水素エンジン「X15H」を初公開しました。

走行距離を伸ばすとともに、FCEV普及にも貢献する水素エンジン技術

経済活動の生命線である長距離輸送用トラックを例に、水素エンジンの可能性を考えてみましょう。ここで注目したいのは、水素エンジン技術で使用される燃料タンクの構造です。

水素エンジンを動力源とする自動車では、水素燃料を700バールもの高圧状態に維持する必要があります。そのため、タイプ4の炭素繊維燃料タンクよりも、高コストで高機能な燃料タンクを使用するのが一般的です。この燃料タンクにはより多くの水素を貯蔵でき、トラックの長距離走行を可能にします。

この高機能な燃料タンクは、燃料電池電気自動車（FCEV）にも使用できます。水素エンジンの開発が進み市場が拡大すれば燃料タンクの製造コストは下がり、将来的なFCEVの普及にもつながるはずです。

FCEV が長距離大型トラック市場でゼロエミッションを達成するための長期的なソリューションであるのに対して、水素エンジンは将来的なFCEV普及を後押しする直近のソリューションとして期待されているのです。

水素エンジンは運輸・物流業界にとって魅力的な技術

カミンズは、輸送分野における水素エンジン技術の可能性について、運輸・物流業界と対話を重ねてきました。その結果、彼らは水素エンジンの以下の特徴に注目していることが分かりました。

• ゼロカーボン燃料を使用可能である
• 2020年代半ばには大規模な製造が可能となる
• 成熟したエンジン技術およびパワートレイン技術、既存の製造拠点などを活用でき、初期コストを抑えられる
• 外観や音が従来のエンジンと似ており、搭載場所も従来のエンジンと同じため整備がしやすい
• 燃料電池の普及を待ちながら、水素燃料に慣れることができる
• 燃料電池と同じ燃料補給インフラや水素貯蔵装置を使用できる

つまり、水素エンジンが持つ二酸化炭素削減の可能性や、市場投入時期の早さ、初期コストの低さ、そして技術の身近さなどを総合的に考えた結果、水素エンジンを非常に魅力的な技術だと捉えているのです。
2022年1月には、アメリカの大手輸送・物流企業であるワーナー・エンタープライジズ（Werner Enterprises）が、カミンズの15L水素エンジンを自社車両に搭載し、検証すると発表しています。

水素エンジン開発に向けたカミンズの思い

水素エンジンの分野では、将来的な規制方針などを含め、未知の部分がたくさん残っています。

カミンズは、ゼロエミッションを実現する上で水素エンジンが非常に大きな役割を果たすと考えています。お客さまやパートナーに、最高のローカーボンおよびゼロカーボン・ソリューションを提供できるよう、これからも水素エンジンの開発に力を入れていきます。