お知らせ
2023.08.29
防錆剤コーティングの廃止でサステナビリティを向上
エンジンの防錆コーティングの廃止を実現
エンジンは外から目につきにくい場所に搭載されるにも関わらず、塗装が施されているのが一般的です。塗装と言っても装飾的な目的ではありません。かつてはエンジン製造にねずみ鋳鉄が使われることが多く、腐食を防ぐための防錆塗装が必要でした。このコーティングによってエンジンと部品の寿命を延ばし、耐久性を高めていたのです。
しかし、大量の水やエネルギー、天然ガスなどが必要となるほか、化学廃棄物や揮発性有機化合物(VOC)も排出するなど、塗装による環境への負荷が高いことが問題となってきました。
そこで、カミンズのコロンバス・ミッドレンジ・エンジン工場(以下、CMEP)のエンジニアチームは、コーティングプロセスの評価を実施。コーティングなしでも過度の腐食が発生する恐れはなく、同じ品質、機能、耐久性を確保できることを突き止めたのです。
実は、技術の進歩によってアルミニウムから鋳鉄までさまざまな素材が複合材として使われるようになっていたため、腐食の危険性のあるエンジン部品は10種類以下だったのです。そのため大半の部品は難なくコーティング工程を省くことができました。また、酸化を起こしやすい部品については最終組立前にパウダーコーティングを施すなど、より持続可能な方法を採用。2021年にはコーティング工程の大部分を廃止することで、6.7Lディーゼルエンジンの製造におけるサステナビリティを向上させることに成功しました。
エンジンコーティングの廃止のメリット
コーティングを廃止したことでCMEPが得たメリットにはどのようなものがあったのでしょうか。ここではサステナビリティに関する内容をご紹介します。
水の使用量と有害廃棄物の削減
CMEPでは、コーティング加工ラインだけで1日に10,000〜14,000ガロン(37,854〜52,996リットル)の水を使用していました。塗装の経年劣化と剥離を防ぐためにはエンジンを徹底的に洗浄する必要があるため、コーティング洗浄タンクの水には3種類の化学薬品が混ぜられており、コーティング工程では年間平均23,500ガロン(88,957リットル)もの化学薬品が使用されていました。
コーティングを廃止した結果、CMEPでは年間およそ500万ガロン(1,893万リットル)の水の節約と、揮発性有機化合物(VOC)や粒子状物質の排出の削減を実現しました。
NOx排出量の削減
コーティング加工に使う機器類を動かすためには、天然ガスなどのエネルギーを大量に使用します。天然ガスは環境にやさしい燃料とされていますが、それでも大量に使用することで微量ながらも大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)を排出します。
コーティングを廃止することでCMEPでの天然ガスの使用量は88%削減され、毎月900万ガロン(3,407万リットル)の天然ガスを節約できるようになりました。これは米国の一般家庭の使用量20年分に相当します。NOxの排出がなくなったことで工場と製品のクリーン化が実現できただけでなく、大きなコスト削減にもつながりました。
プラスチック使用量の削減
エンジン塗装の工程では、クリアコーティングを必要としない部品を保護するためにプラスチック製のカップやテープ、ステッカーなどを使用していました。コーティングを行うエンジンの部品やセクションの数を減らすことでプラスチックの使用が大幅に減り、工場全体で推定約16,500ポンド(7,484キロ)もの廃棄物の削減を実現しました。
さらに、コーティング加工の廃止はCMEPにイノベーションの余地ももたらしています。それまでコーティングラインに使用されていた約20,000平方フィートもの敷地を、エンジン改良のために使用できるようになったのです。
コーティングの廃止は環境のための重要な取り組み
今や、スコープ3排出量の削減や環境目標の達成、排出規制の遵守が重要な時代になったと言っても過言ではありません。CMEPは、これまでよりクリーンな製造方法で環境基準をクリアし、品質と耐久性を保持したエンジンを製造しています。よりクリーンなエンジンをお客様に提供することで、製造・使用の両面から環境目標の達成に近づくことができるのです。
CMEPでのコーティング廃止は、高く評価され、2022年に行われたインディアナ州の年次汚染防止会議において、インディアナ州知事賞(環境優秀賞)を受賞しました。この取り組みを実施することは容易ではないものの、多くの工場でトライアルが始まっています。例えば、カミンズのロッキーマウント・エンジン工場などでは現在、水性塗料への転換を検討しています。
イノベーションと技術の進歩によって時代とともに進化してきたカミンズ。今後も、社会のニーズと地球環境のために、進化を続けていきます。
※この記事は、2023年3月21日に英語版で公開された記事をもとに、再構成したものです。