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2023.04.11
「再生可能ディーゼル」とも呼ばれる、HVOとは。よくある質問とその回答
ディーゼル燃料と似た特性を持つ低炭素燃料「HVO」
近年、環境保護などの目的で、化石燃料に代わる新燃料の開発が進んでいます。中でも注目を集めているのが、再生可能ディーゼルまたは水素化植物油とも呼ばれるHVOです。
HVOは、廃食油などからつくられる代替燃料です。化石資源を使わずに製造できるにもかかわらず、従来のディーゼル燃料と似た特性を示すため、近年注目が集まっています。
この流れを受けて、カミンズもHVOの利用に力を入れています。例えば、カミンズのディーゼル発電機セットを非常用電源として稼働させる際には、HVOやその他のパラフィン系燃料を使用することができます。当社は、マイクロソフト社に代表されるような脱炭素化に取り組む顧客をサポートできるよう、環境面においてもさまざまな配慮をしています。
この記事では、HVOについてのよくある質問とその回答をご紹介します。
HVOに関するよくある質問と、その回答
パラフィン系燃料とは?
パラフィン系燃料はディーゼルの代替燃料で、硫黄分と芳香族分が少ない点が特徴です。その原料はさまざまですが、一般的には天然ガス、石炭、植物油、動物油脂などから製造されます。
HVOとは?
HVOは、再生可能ディーゼルまたは水素化植物油とも呼ばれます。植物油や使用済みの食用油などを加工して得られる低炭素燃料であり、パラフィン系炭化水素から構成されています。
HVOとディーゼル燃料との違いは?
HVOは、ディーゼル燃料と同様の化学的・物理的特性を示します。しかし、HVOは製造時に化石資源を使用せず、炭素含有量が少ないことから、持続可能な燃料を求める人々にとって魅力的な選択肢となっています。さらに、ディーゼル燃料に比べて燃料密度が約7%低いこと、芳香族や硫黄の含有量が少ないこと、セタン価(燃料の着火性を示す指標)が高いことも特徴です。
HVOとバイオディーゼル燃料との違いは?
HVO は、バイオディーゼル燃料と同じ原料から製造されます。しかし、HVOはエステル交換プロセスではなく水素化プロセスによって製造されるため、バイオディーゼル燃料よりも酸化安定性が向上する点が特徴です。このため、HVOはバイオディーゼル燃料に比べてバクテリアが繁殖しにくく、非常用発電機セットでの使用に適した持続可能な選択肢となっています。
HVOと GTL(GAS-TO-LIQUIDS) 燃料との違いは?
GTL燃料は、天然ガスから製造されるパラフィン系燃料です。HVOとGTL燃料は、物理的・化学的に同じものであり、いずれもEN15940(パラフィン系燃料に関する欧州規格)に準拠しています。しかし、GTL燃料は化石燃料である天然ガスから製造されるのに対して、HVOは再生可能な原料から製造されます。そのため、燃料のライフサイクル全体における炭素排出量は、HVOの方が少なくなります。
カミンズの発電機セットをHVOで稼働させた場合、どのような性能が期待できるのか?
カミンズは、HVOとディーゼル燃料を使用して複数回のテストを実施し、その結果をホワイトペーパーで公開しています。その中で示された、発電機セットの予測についてご紹介します。
【発電機セットでのHVOとディーゼル燃料の使用比較】
- 始動時および過渡状態(エンジンの回転数や負荷が急激に変化する状態)の性能は変わらない
- HVOはエネルギー含有量が低いため、燃料消費量が最大5%増加する
- 一部の発電機セットのモデルでは、HVOを使用した場合、出力が最大2%低下する
- NOx排出量の変化はごくわずかである
- HVO使用時の粒子状物質(PM)の排出量と煙の量は、ディーゼルに比べ大幅に減少する
また、HVOを使って発電機セットを稼働させた場合も、EPA Tier2(米国の排出ガス規制)およびTA Luft(ドイツの排出ガス規制)を満たすことができます。
既存のカミンズ製発電機セットをHVOで稼働させるには、どのような変更が必要か?
カミンズのエンジンおよび発電機セットをHVOで稼働させる際に、ハードウェアやソフトウェアを変更・修正する必要はありません。HVOでの稼働が保証されている発電機セットには、カミンズの標準保証および延長保証が適用されます。
HVOの生産量や採用率はどの程度か?
HVOの採用率は、サプライチェーン上の問題やコストの高さによってある程度制限されているのが現状です。一方で、ディーゼル燃料の使用が制限されている市場ではHVOの採用が進んでいます。また、北米や欧州の一部ではHVOのサプライチェーンが発展しつつあります。顧客のESG目標によってHVOの需要が増加すれば、生産量や採用率も増加するはずです。
IEA Renewables 2020レポートによると、2023~2025年におけるHVOの平均生産量は630億Lと、2019年の水準より30%増加すると予測されています。この増加量の半分超は、シンガポールと米国でのHVO生産拡大に起因するものです。
脱炭素社会の実現に向けて
カミンズは創業から100年超にわたり、実証済みの電力システムソリューションと進化するテクノロジーとを統合し続けてきました。この経験により、グローバル基準や顧客の要件を満たすだけではなく、それらを超えられるだけの柔軟性を獲得してきたのです。
カミンズは今後も、HVOをはじめとする代替燃料の可能性を追求し、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
※この記事は、2022年7月1日に英語版で公開された記事を抄訳、加筆したものです。
※HVOに関するその他の質問とその回答は、こちら(英語資料)をご覧ください。
※カミンズのデスティネーションゼロ戦略と、より豊かな世界の実現をめざすカミンズのミッションに関しては、こちらをご覧ください。